2018年度 関西大学入試問題<政治・経済>全体講評

●関西大学 全体講評(政治・経済)

目次

〔政治〕注目するポイントは2つ

政治分野においては、例年の出題方針を概ね踏襲して問題の作成に当たった。
具体的には、(1)基本的な重要事項を理解できているかを問うことに主眼を置きつつ、(2)一部の設問において、基本的な重要事項の理解を前提として論理的な考察を行う力があるかを問うた。

(1)基本的な重要事項を理解できているかを問う際

条件反射的に解答を導き出すことができるような出題は極力避けることとした。
これは、重要な用語をとにかく記憶すれば足りるわけではなく、その用語の内容を正確に理解することが必要であると考えているためである。
また、現代史に関わる事項を積極的に出題することとした。これは、基本的な重要事項を歴史やこれまでの経緯の中で適切に位置づけて把握することによって初めてその事項の内容を十分に理解したと言えると考えているためである。
さらに、時事問題を適宜問うこととした。
これは、歴史やこれまでの経緯の延長線上に存在する今日的問題を知悉しているかどうか確認することが基本的な重要事項の理解の程度を確かめることになると考えているためである。

(2)基本的な重要事項の理解を前提として論理的な考察を行う力があるかを問う際

高校レベルの知識を前提に、通常説明される場面とは異なる流れの中で、習得した知識を応用して解答することを求めた。
これにより、基本的な重要事項の理解を確認することができるとともに、論理的な考察力や応用力を試すことができると考えている。
なお、2018年度より、大問ごとの配点(20点または30点)を変えることなく、小問の難易度に応じて各小問の配点に差をつけることとし、受験生の実力がより的確に点数に反映されることをめざした。

採点結果を踏まえて、八つの学習アドバイス

その1 用語の内容の理解
全般に、正確な内容を理解していることが求められる問題の正答率が低かったことから、受験生の大半は、重要な用語を知っているものの、その用語の内容まで正確に理解している者は決して多くはないように推察された。
学習に当たっては、重要とされる用語を暗記するだけではなく、用語集等を用いて、その用語の内容を正確に把握するよう努めてほしい。
全日程を通じて、特定の分野の正答率が低い傾向が看取された。
例えば、政党や少年法についてである。よく理解をしておいてほしい。

その2 憲法の条文の理解
憲法の基本的な条文に関する設問において正答率が意外に低かったことから、憲法の重要条項の条文すらよく理解していない受験生が相当数存在することが窺われた。
受験生には、憲法の条文を正確に理解するよう求めたい。
出題者としては、あえて言うならば、その程度のことは関西大学を志望する受験生にとって、そしてより多くの学習量が求められる他の科目と比較しても、決して高いハードルではないと考えている。

その3 歴史にも関連付けて
現代史に関する問題の正答率が総じて低かったことから、多くの受験生が基本的な重要事項を歴史や経緯の中で適切に位置づけて把握するに至っていないことが窺われた。
歴史を知らずして、政治分野を学んだとは言えない。
学習に当たっては、歴史や経緯に常に関心を払い、制度や状況がどのように展開してきたのかを理解するようにしてほしい。

その4 ニュースに関心を持つ
時事問題の正答率がそれほど高くなかったことから、報道に関心を十分に払っていない受験生が少なからず存在すると考えられた。
学習に当たっては、学んでいることが社会においてどのように役立っているのか、変化しているのかという視点から、日々の報道に接してほしい。

その5 地理の知識も身につける
地理的な理解が必要な問題の正答率が予想以上に低かったことから、学習の際に地図を確認していない受験生が相応に存在することが窺われた。
重要な国や場所は地図で確認し、地理的な感覚ももって学習を進めておくことが必要である。

その6 論理的な思考を
典型的な流れではない場面で「考えて」解答することが求められる問題の正答率が全般に低かったことから、論理的に考察することや知識を応用することが苦手な受験生が少なくないように思われた。
学習に当たっては、三権分立や基本的人権の尊重といった原理・原則を踏まえて考察するよう努めてほしい。
また、解答に当たっては、政治・経済の場合、解答のための試験時間は十分にあるはずであるから、空欄や下線部周辺のみを読むだけでなく、労を惜しまず、問題文全体を精読して出題者の導く論理を理解するよう努めてほしい。

その7 読む人の気持ちを考えて
記述式の問題において、採点者が読むことができる文字を正確に書こうとしない受験生が少なからず見受けられた。
誤字はもちろん、採点者が判読不能な続け字(画数が異なるもの)や他の字にも読み得るもの(例えば、シともミとも読み得るもの、アとも3とも読み得るもの、アともラとも読み得るもの等)は、倒年、誤答として扱っている(念のために付言すると、当然のことながら、部分点すら認めていない)。
政治の問題においては、記述する文字数も少なく、記述する時間は十分にあると思われる。
合格に値する実力を示す責任は受験生の側にある。
雑な流し書きの解答を採点者が忖度してその受験生にとって有利に扱うことは、合格するために一画一画丁寧に書いた受験生との公平を失するものであり、許されないと考えている。
入試であることを踏まえ、一画一画丁寧に書いてほしい。

その8 油断せず、万全の準備を
2018年度では出題しなかったものの、ここ最近、学部個別日程のいずれかの日に数十字程度の論述問題を出題してきた。
論理を展開する力や受験生の書く力を計るために、次年度以降の入試においても出題を検討していくことを基本方針としている。
2018年度で出題がなかったことから今後の出題がないと誤解することなく、しかるべき備えをしてほしい。

★政治・経済は、他の社会科目と比べて、押さえるべき事項は決して多くない。
しかし、それらの事項は、大学で学ぶ際の基礎となるものと言うだけでなく、この社会の将来を担う一員として正確に理解しておかなければならないものである。

出題者より

安直な準備に終始した受験生としっかりと学習を進めた受験生の得る点数に差がつく質の高い問題を提供し続けることにより、真摯に取り組んできた受験生が報われるべく問題作成および点検ならびに採点に当たっている。努力することは決して無駄にならない。
出題者、ひいては関西大学の教職員の期待に応えるべく、学習に励んでほしい。真剣に研鑽を積んできた受験生を関西大学の学生としてキャンパスで迎えられることを願ってやまない。

〔経済〕出題範囲

経済分野においては、経済理論(マクロ:国民経済計算・景気循環、ミクロ:市場均衡)、経済政策(財政・税制・金融政策)、産業経済(農業・中小企業)、金融(信用創造・外国為替)、国際経済(国際貿易)、経営(企業経営・労働問題)、経済史(戦後日本経済)と、特定領域に偏らないよう、また理論・政策・制度・歴史のバランスも考慮して出題した。

ほとんどがマークセンス方式であるが…

基本的に教科書に記述があり経済問題を分析するうえで重要な専門用語や概念を取り上げることを出題方針とした。
高等学校の政治・経済の教科書を丁寧に読み、理解していればほとんどの問題については解答可能である。
ただし関西大学受験生の学力は高く、ほとんどの教科書に記述のある基本的事項では正答率は極めて高くなり、受験生間で差が見られず入試問題の役割を果たさないので、採択率に捕らわれず問題作成することとなった。
したがって受験生には、実際に学校の授業で使用されている教科書だけでなく、副教材(資料集・用語集・図説参考書等)の活用による自習をお勧めする。

ただ、マークセンス方式であっても…

論理的思考力や読解力を含めた総合的学力を問うことを意図している。
つまり、事実としてその用語や概念を知らない(あるいは記憶していない)場合であっても、前後の文脈から論理的に正答を導出可能なように工夫を凝らしている。
そのため問題文をよく読んで、文脈の中で言葉を理解する訓練をしてほしい。
問われる用語はあくまでも、教科書で使用される学術的に厳密に定義された専門用語としての「経済用語」である。
そのため、語群にあっても一般的に使用されている単語では、文意は通じても厳密性に欠け問題文の文脈では不適当な内容を含むと判断されるので(最も適当な語句を選択するという意味で)、正答とはされない。

・グラフや数値の取り扱いに慣れる
また、経済活動水準は数量的に把握できるものが多く、経済主体間ならびに経済事象間の因果関係や相関関係を数式で表現できるため、計算問題やグラフを使った出題も行った。
文章で表現される内容をグラフ化する、あるいは逆に図式化されたものから内容を読み解く経験を積んでほしい。
また、教科書記載事項の事実をデータで確認しその数値の意味を説明できるよう努める他、教科書とは異なる具体的な数値例を自ら設定して計算する勉強も怠らないでほしい。

・経済学の活躍の場
さらに、産業革命以降の資本主義の発展に伴い、経済問題は深刻化しかつその原因は複雑に絡み合って容易には解決できなくなっている。
経済学はこうした経済問題(つきつめて言えば、希少な資源の効率的配分と、経済活動の成果として獲得される富の公平な分配)の原因を探求し、その効果的な解決策を見出すための分析用具を開発することで、種々の政策提言を行い、既に制度として確立しているものがある。
経済学はいまや、現実の経済問題を解決するために現代社会では欠かすことのできない有用な実践的分析用具(政策立案に不可欠の学問)となっているのである。

しかし、実際に採用される政策については…

時代背景や国情、またその時々の政権の施政方針により、実現のために選択される政策手段や政策目標自体の優先順位が異なる。
加えてグローバル化の進む現代社会においては、わが国から遠く離れた地域で発生した紛争や政治的出来事が、日本経済に大きな影響を与えることが日常的になっている。

入試問題で正答を得るには

他教科(地理・歴史・政治・数学)の知識を総合的に活用することが求められる。
単なる断片的知識の丸暗記では通用しない。教科書や参考書の内容の理解だけでなく、日常的に新聞やテレビのニュース(ネット・ニュースではない)に目を通し、時事的な政治・経済問題に関する知識の涵養に努めてほしい。
同時に、そうした一見無関係にも見える種々の出来事を関連づけて考える習慣を身につけ、社会全体の仕組みを総合的に把握する視点や因果論的に分析する経験を培って、入学試験に備えてほしい。それは、大学に進学してからの勉学にも役立つはずである。

最後に…

記述問題は使用する語句を指定しているにもかかわらず全く別の語句で答えたり、前後の単語や文脈からすると不適切な語句を使用したりする事例が見られた。
この場合も、日頃の読書によって読解力の向上に努めてほしい。また、書かれた文字が乱雑で採点が困難な場合も散見された。
きれいな文字・数字で書く必要はないが、採点者の誤解を招かないよう丁寧に記入することを切に要望する。

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